いろはに金平糖ちりぬるを

読んだ本・見た映画の備忘録

顔のかなたに

また見つかった、

何が、永遠が、

海と溶け合う太陽が。

 

ほうれい線が出た。出たというか、数年前から「この辺に出ます」という予告のようなものは顔の上にうっすら出ていたのだが、無視できる程度だったので気にせず生活していて、先日久しぶりに化粧でもするかと思って鏡でおのれの顔を見たらはっきりと現れていた。

自分の体が変化すること自体にまったく動揺しないのは難しいものの、せっかくなのでこの二本線がある顔を面白くいい感じに過ごす方法を知りたいのだが、「気にしないで明るく笑って過ごす」というのが今のところ世間での唯一解になっている気がする。別にそれはそれでいいんだが、この年を取った顔ですると若いころの顔でやるより似合う化粧とかないのか。

ここ数年、アンチエイジングという言葉の代わりにエイジングという言葉を使ったりしてその年の自分が美しくいられる方法を見つけようというニュアンスを押してくるようになったきらいがあるが、実際のところ年取った顔で何をするというわけではなさそうで、つまらん話だ。まあ、そういう言葉を使うようになったのはアンチエイジングがひとしきり世間にいきわたった後に若返りは存在しないということが周知されてしまったので今度はお前はそのままでも美しい、ついてはうちの会社のクリームを顔に塗るとさらに良い、という話でしかないんだろうが。結局のところ広告にその辺のおばさんを使う会社はない。

しかしこれで私もいよいよ市場の関心からはじかれた領域に入ったわけだ。若くなく、ほうれい線を消したいとも思ってない人間の居場所は化粧品業界の想定する世界にはない。マーケットとして存在せず、ファンデとか買う時だけ業界との接点が生まれるわけで、なんだか幽霊のような存在だ。個々の化粧品を購入する瞬間だけ現れる幽霊。幽霊だと思うと楽しくなってくるな。夜ごと飴を買いに来る女の幽霊みたいな感じのやつだ。これからは幽霊の化粧をすることになる。人生の新たなステージだ。