いろはに金平糖ちりぬるを

読んだ本・見た映画の備忘録

識別

今年6月から庭で落花生を育てている。特に園芸が趣味というわけではないが、たまたま落花生の苗が売られているのを見かけ、自分が普段食べている形そのままの落花生が真っ二つになった状態で土にズボッと半分ほど埋められたものから茎が出て葉がついていることがなんとなく面白くて庭に植えることにした。
ちゃんと収穫をしたい場合は土に事前に何かを混ぜておいて酸性度を下げる、肥料を混ぜ込んでおくなどの前準備がいるらしいが、とりあえず何もせず庭の片隅に穴を掘って苗を植え付けてみた。おいしい落花生が食べたいわけではなく、普段食べている落花生から芽が出て葉がついて花が咲いて、種としてまた普段食べている落花生ができるというサイクルを見たくてこの苗を育てることにしたのでまあ別にいい。

これまでも庭に興味本位で植物を植えては成功したり失敗したりしていて、落花生のことも毎日新しい芽がついたの花が咲いたのというのをただ見て楽しんでいる。黄色いいかにもマメ科な感じの花が咲いたり、楕円形の穏やかな形の葉っぱが左右対称についていて、夜になるとそれがぴったり閉じたりしてかわいらしく、見ていて結構楽しい。肥料もないのに思ったより旺盛に枝葉を伸ばしているところもガッツがあって良い。落花生からしたらいまいちな環境で必死にやってるだけかもしれず、気楽にガッツがあっていいねとか言われても何だお前はという話かもしれないが。

そうやって落花生を眺め暮らしてしばらく経ったころ、車で走っていたら道のわきに小さな畑が見えた。ほんの一瞬で通り過ぎたが植えられているのが落花生だったのがはっきりわかった。思わず運転していた家族に話すと自分も見たという。これまでだったら緑色のもやだったものが、落花生が私たちの生活に入ってきてからは落花生だとはっきり目に見てわかるようになって、なんとなくそのことがうれしかった。

 

しばらく前にあいみょんの歌を初めて聞いた。それまで名前からはどんな音楽をやってるのか想像もつかなかった。
『君はロックを聞かない』が偶然ラジオで流れてきて、こんな有名な人で多分この歌も有名なんだろうに私たちは何も知らんねという話になり、どんな歌を歌っているのか確認しようと何曲か聞いてみた。ライブ映像ではものすごい人数の人が一緒に歌って楽しんだりしていて、なるほどこんな感じなんだと漠然と納得した。

後日スーパーで買い物をしていたら、突然店内BGMが耳に飛び込んできた。初めて聞く曲だがこの湿度の高い感じには覚えがある。これはもしかしてあいみょんではないか…と思って家族に話しかけたところ、家族もちょうど同じことを考えていたらしい。歌詞をワンフレーズ分覚えておき、買い物が終わってからググってみたところやはりあいみょんだった。前まで十把一絡げに最近の曲として片づけていたものの中から彼女の曲を識別した事実になんとなく高揚感を覚えた。私たちは今やあいみょんを見分けることができるようになったのだと思うとなんとなく楽しい気がして、まあだからなんだという話だが、それからはスーパーであいみょんらしき曲がかかると家族と目配せをしあっている。