いろはに金平糖ちりぬるを

読んだ本・見た映画の備忘録

『TENET』を観た

内容を伏せることなく感想を書いています。

いや全然わからんかったんだが……???この手の映画を観ると、昔は魔法とかオカルトっぽいものとかふんわりしたタイムマシンで処理されてたことを物理学とか脳科学の話を突き詰めた結果としてやると新鮮に見えるっていうやつって、流行ってるんだな…と思う。なんかこう…観測しているお前がこの世界(という認識)を作り出しているのだ…的な。流行りというか今のスタンダードというか。 

全編通してなんかすごい作戦をやっとんのやろな!!なんか感動的なシーンなんやろな!!この女の人が怒るのにはふさわしい理由があるんやろな!!って感じで全てそういうふうにできている(さくらももこ)状態になってしまった…登場人物がそう言ってるからそういうことになっとんのやろな…みたいな……こんな調子だから最後の感動的であろうニールとのシーンも「なんか……主人公こそが全てを知って仕組んでいて、ニールは主人公のために、この作戦を成功させるために、自分は逆行する世界から元に戻れなくなるのを承知で生きていたんだな……何でかはわからんけど……」になった いやあのリュックについてた5円玉みたいなやつ何ですか?基本的に時間がどうこうなる映画は一度目には理解できないんだけど(説明を聞いてもわからんことも多い)このわからなさはすごいですよ!って途中でちょっと意識が映画の外に出てしまった。

そもそも過去に戻ることと行為として逆行することの違いというか区別がつかなくて、その時点でもうだめだ…わからん…何も……になってしまった。時間が通常の流れ(未来に向かっている)時は赤、逆行している時は青っていう色でちゃんとわかるようにしてくれてるのはありがてえけどそこ以前のところで理解が追いついてないから監督の気遣いというか演出を完全に無駄にしちまってて…すまん……。

全体的に自分がSFあんま得意じゃないな〜と思う感じが凝縮されたような映画だなという印象だったかな…。このわかんない感じ、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品を読んだときに感じた感覚に似てる。作り手はわかってて情報が伏せられたまま謎めいた話が勢いよく進行して最後にわかってくる…みたいな流れが。いや、ダイアナウィンジョーンズはSFじゃなくてファンタジーだけど。だから実際はジャンルどうこうの話でなく、情報の出し方の話なんでしょうな。

なんかデカいものを動かしてて派手ですごい!って方向で楽しむのがいいのかもな〜とは思うんだけど、アクション面に集中しようと思うとちょっと冗長な印象が。このシーン長いな、多分監督が見せたいシーンなんだろうな…って想像してしまった。フリーポートのシーンは後になってみれば意味があったんだねと思えたは思えたが。

あとまあこれは大きめの劇場で見たからかもしれないけどドゥーーーードゥドゥドゥ ドゥッドゥッドゥッ……みたいなクソデカ重低音がずっと鳴っててちょっと疲れました。上映前のいろんな映画の予告編でしか聞いたことない感じの音楽を全身に浴びて「ああ……これが世間の味ってやつなんだな……」ってなった。

そういえば高校の時に現代文の先生が「時間は前、つまり未来に向かって進んでいると思うかもしれないが、未来に向かって進んでいるのはあくまで時間が流れ行くのを観測している私たち自身で、時間は私たちの後ろ、つまり過去に向かって流れているのだ」という話をしたのを聞いたことがあったのをこの映画見て思い出した。